第1回:宮島ヨハナさん「声なき人のために、声をあげていきたい」

社会課題解決に取り組む学生のストーリー

allesgoodのインターン生の由衣です。
今回は、難民問題に取り組むICU2年生の宮島ヨハナさんにインタビューしてきました!

メディアでも耳にする機会が増えつつある、日本における難民問題や入管問題。
日本で起こっていることではありながらも、身近に感じられる人はまだまだ少ないのではないでしょうか。

インタビューをしたヨハナさんは、幼い頃から難民・移民の方々と接する機会があったといいます。ご飯をご馳走になったり誕生日会に呼んでもらったりするほど、仲の良かった方もいたそうです。
ヨハナさんのストーリーを通じて、読者の皆さんが日本における難民の問題を身近に感じ、関心を持つきっかけとなったら嬉しいです。

自己紹介

名前:宮島ヨハナ

活動団体:IRIS

経歴:ICUに2021年9月に入学。2022年9月現在は2年生。
   家族の影響で、幼い頃から移民の方々が身近な存在。
   憧れは、幼い頃に伝記を読んだマザーテレサ。

緊急性の高い支援をしながら、難民問題の認知度を広めていく

ーー難民支援団体「IRIS」ではどんな活動をされているのですか?

収容者との面会を通じて、当事者の声を聞いて何が必要とされているのかを理解することを大切にしています。そして、緊急性の高い食料の支援をしながら、デモや、難民の方をゲストスピーカーとしてお呼びするトークセッションを通じて難民問題の認知の拡大に取り組んでいます。
入国者収容所での医療の提供不足が問題となってますが、難民問題の根本的な解決には、抜本的な入管法の改正が欠かせません。ですが、そもそも難民問題の認知が低いので、緊急性の高い支援をしつつ、市民の問題意識を高めていく両方の活動が大切だと考えています。

食料支援のためにセカンドハーベストを訪問した際の写真

ーーサポートしている難民の方々は、どのような方々なのですか?

何十年も日本にいて生活の基盤が日本にあったり、日本に家族がいたり、母国に帰れない理由があるなど、それぞれ理由があってオーバーステイになっている移民や、難民としての認定を待っている難民申請者の方々を支援しています。

仮放免制度*で収容を解かれても、国民健康保険に入れず、就労も許可されていません。収入がないので、食糧確保の支援に頼って生活するしかないんです。ホームレスになってしまう人もいます。

日本に来る理由は人それぞれで、人種、宗教、国籍、ジェンダー、政治的意見などの理由で、母国での迫害の恐れがあって日本に逃れてきた方がいます。
留学や出稼ぎで来日した移民の方々の中にも、それぞれの個人的な理由で母国に帰ることができない人もいます。名古屋入管で収容中に亡くなったスリランカ国籍のウィシュマさん*の場合は、DVを振るうパートナーから「母国に帰ったら殺す」と脅されていました。

*仮放免制度とは:病気その他やむを得ない事情がある収容者に対して、一時的に収容を停止し、一定の条件下で身柄の拘束を解く制度。
出典「仮放免許否判断に係る考慮事項
*ウィシュマさんについて詳しくはこちら:「『手や足を引っ張り、まるで動物のように…』30代女性に名古屋入管職員が行っていた”許されざる行為”

ーー難民の方の多くは、母国に帰ると命に危険が及ぶ人たちなんですね…。実際に活動する中での思い出深い出来事はありますか?

2022年度のICU祭で行ったトークセッションとアクセサリー販売をしてくださったアナさんとの対話ですね!

仮放免の保証人として活動していた父を通じて知り合った、イラン出身の難民のサファリさんにお越しいただいて、トークセッションで自身の難民としての経験を話してもらいました。辛い経験を人に話すって勇気がいることだと思うけれど、「より多くの人に日本にいる難民の状況を知ってもらえる」と同じビジョンを持って活動できましたね。

難民問題に関する講演会で出会ったリベリア出身の難民のアナさんにも、ICU祭にお越しいただきました。アナさんが日頃から販売している手作りのアクセサリーを販売してもらったのですが、「機会を作ってくれてありがとう」と言ってもらえました。アナさんにはお子さん2人がいて、政府からの支援は生活するのに不十分な中で、自分の力でお金を得る経験は、当事者にとって大切だと改めて実感できた経験でしたね。

*サファリさん・アナさんの詳細のプロフィールはこちら:https://www.instagram.com/p/CjMorq5Jv5B/?hl=en

2022年のICU祭の様子

幼い頃から身近な存在だった難民の方々

ーーヨハナさんにとって、「難民」の方々は身近な存在だったのですか?

父が10年以上、仮放免の保証人としてボランティアをしていて、幼い頃から仮放免中の方と話す機会がありました。その中で、親密になったスリランカの方がカレーをご馳走してくれたり、カメルーンの方が小学校の時に勉強を教えてくれたりしました。

けれど、実は高校生になるまで難民や移民を取り巻く環境について知りませんでした。

ーーえっ!これだけの知識量なのに!

高校の卒論研究のテーマに悩んでいた時に、親に入管問題を勧められて。調べてみて初めて日本にいる難民を取り巻く環境の厳しさを知りました。調べるほど、状況の酷さにショックを受けましたね。どうしてもっと早く教えてくれなかったの!って(笑)。

キリスト教の聖書には「神を愛し、隣人を自分のように愛すること」が最も大切な掟だと書かれていて、社会から見過ごされている人も愛することを自分の使命のように感じています。卒論研究の一環でデモを企画したのですが、そこでスピーチした時に涙ぐむほど、難民の方々の状況に対して気持ちが入っていました。

ーーその後、IRISを立ち上げられたのですか?

難民問題解決への想いが高まる中で、ICUには難民支援サークルがないことを知りました。
その中で、私がやりたいことに近かった上智大学の難民支援サークルの方に相談すると、ICUで難民支援サークルを立ち上げようとしている二年生のICU生を紹介してくれて、学校が始まってから一緒に立ち上げようと話をしたんです。彼と私で友達を集め、メンバー8人ほどで始めました。

デモに参加された時のヨハナさん

声なき人のために声をあげていきたい

ーー将来のビジョンは何ですか?

最も小さいもの…例えば、声を聞いてもらえない人、孤独を感じている人、人権侵害されている人に寄り添い、誰もが安心して暮らせる社会を実現したいです。
私としては、社会から見過ごされている人々のことを愛して、声なき人のために声をあげていきたいです。

ーー「愛する」ってどんなイメージですか…?

人として、友達として「普通に接する」ということですね。それは、優しさであり、思いやりや忍耐を持って接することです(コリント人への第一の手紙13:4-8)。入管に収容される人はよく、「人間として接してほしい」と言っています。彼らが求めているのは、特別扱いではなく、ただ人間として尊重してほしいのです。

また、難民や在留資格のない移民の方をエンパワーする活動がしたいです。
日本が大好きで、日本社会に貢献できる難民の方々が多くいます。税金を払いたいと言っていたり、母国では医者や弁護士として活躍していて高いスキルを持っていたりするんです。制度的に叶えることは難しいですが、彼らが日本で仕事をできるよう応援したいです。

ーー今後、IRISの活動を通じてやりたいことはありますか?

現在、ICU高校の支部が立ち上がっているので、今後はさらに他大学に同様の活動を広げていきたいです。

私がSNSで難民問題の情報発信をした際に「オーバーステイをしているのに、どうして難民や移民を支援するの?強制送還しないの?」というメッセージを受け取ったことがあります。

そのようなメッセージを受け取ると、まずは日本の難民認定率の低さ、そしてオーバーステイになってしまった人たちの背景や日本の歴史的背景(バブル時代に日本は安い労働を必要としていたため大勢の移民を受け入れ、オーバーステイになっても送還していなかった)、また入管施設内の劣悪な環境や長期収容の問題などを説明し、オーバーステイの人たちが必ずしも犯罪者ではないこと、そして彼らに起こっていることが人権侵害であることを理解してもらうように説明します。

そのような反応をもらうと入管問題に対してまだまだ偏見があるのだなと感じるので、正しく入管問題を理解してもらうために、偏った情報ではなく専門的で多面的な知識をより多くの人に広めていきたいです。異なる国籍の人の状況に対して当事者意識を持つことって難しいと思います。偏りのない専門的な情報を発信することで、市民の方が持っている潜在的バイアスを無くし、入管問題に当事者意識を持って理解する人が増えたら嬉しいです!

IRISのメンバーとの写真

読者へのメッセージ

ーー最後に読者へのメッセージをいただけますか?

Do not be afraid of what you are doing when it is right(それが正しいことであるのならば、恐れないでください)」という言葉を贈りたいです。

これは、ローザパークスさん*というアメリカの黒人差別と闘った活動家の方の言葉です。

高校生の時、デモを企画し、実名を出すか葛藤したことがありました。実名を晒すことで批判を受けるんじゃないかと思ったこともありましたが、この言葉のおかげで、「私は間違ったことをしていない
正義のために行っていることだから恐れなくていい」と勇気づけられました。
この言葉が、読者の皆さんにとって勇気を得るきっかけになったら嬉しいです!

*ローザパークスさんについて詳しくはこちら:「バスの後部座席から社会を変えた! 今こそ知っておきたい勇気ある女性のこと

編集後記

日本の難民問題に関する知識が本当に豊富なヨハナさんへのインタビュー。ヨハナさん自身のこと以上に難民問題について質問しすぎたかも…と反省したくらいです(汗)。

そんな難民問題への想いが強いヨハナさんが丁寧に紡ぐ「スリランカ人の方がカレーをご馳走してくれて…」「普通の人として愛したい」という言葉がとても印象に残っています。
難民問題というと難しそうで、身近に感じにくい社会問題の一つと捉えられがちかもしれません。ですが、ヨハナさんにとって大切な人たちを守り愛する、優しい活動なのだと感じました。

難民の方々に寄り添いながら、彼らと共に活動をするヨハナさんを応援しています!


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そのような想いで、社会課題解決に取り組む学生へのインタビューを始めました。

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