第3回:木村りささん「社会にある“わかりやすさ”を越えて」

社会課題解決に取り組む学生のストーリー

allesgoodのインターン生の由衣です。
今回は、キャリア教育をテーマに、アメリカ・ポートランドに留学中の「きむりさ」こと、木村りささんにインタビューしてきました!

「社会にある“わかりやすいもの”を越えたい」と話すきむりささん。一つひとつの質問に、22歳の今、等身大で答えてくれました。

きむりささんが言う、わかりやすいもの・わかりにくいものとは何なのか。なぜ、そのように考えるようになったのか。「〜をやっている○○です!」といった短い自己紹介だと隠されてしまう、きむりささんのストーリーをじっくり読んでいただけたら嬉しいです。

きむりささんのプロフィール

名前:木村りさ(きむら りさ)

大学で、教育・文化人類学を専攻。大学1年生では、旅を広める学生団体に所属し、旅のコンテストやイベントを運営。自身も日本各地や東南アジアを旅する。大学2-3年生では、キャリア教育に関する活動に従事。立ち上げ時から関わっていた社団法人で、広報PR・プログラム企画・高校生のサポートなどを行う。地元の福岡県北九州市では、企業や市を巻き込んだ若者向けイベントを開催。現在は休学し、トビタテ!留学JAPANの奨学生として「キャリア教育」をテーマにアメリカ・ポートランドに留学中。取材やエッセイを中心に、ライターとしても活動している。

現地にいるからこそできること

ーー現在はポートランドに留学中とのことですが、現地では何をされているのですか?

コミュニティカレッジに通い、英語とキャリア教育に関する授業を受けています!

ーー日本ではあまり聞かない「コミュニティカレッジ」は、どのような機関なんですか?

コミュニティカレッジは、多様なバックグラウンドの方々が通う教育機関です。高校を卒業したばかりでまだ専攻が決まっていない方や、キャリアチェンジのための学び直しで通う方などがいます。学費がアメリカの4年制大と比べ安いので、より多くの人に学びが開かれています。

*コミュニティカレッジについて詳しくはこちら:​​「アメリカの「コミュニティ・カレッジ」とはどんな大学か?」

きむりささんが通うコミュニティカレッジの様子

ーーそんなところがあるんですね! なぜ、キャリア教育でポートランドを選んだのですか?

ポートランドには「Keep Portland Weird」という街のスローガンがあり、日本語では「変わり者のポートランドであり続けよう!」という意味です。そのくらいアメリカの中でも、1人ひとりの個性を大切にする街として知られています。「出る杭は打たれる」という言葉がある日本と対照的だと思ったからこそ、どんなキャリア観やシステムがあるのか気になって、ここを選びました。

ーーKeep Portland Weird、初めて聞きました!ポートランドの人々のキャリア観に触れる中で、印象的だったことは何ですか?

クリエイティブで起業家精神に溢れるポートランドのイメージが崩れてきたことです。

本やインターネットを通して知った「ポートランドの人」は、自分の好きなことを追求するイメージがありました。しかし実際のところ、全員がそうではないことに気づいたんです。生活のために必死に仕事や学位の取得に励む人がいたり、やる気がなさそうに勉強する学生もいたりしました。

ーー想像と異なるポートランドを知って、実際どのような気持ちになりましたか?

ポートランドでの学びは今後のヒントになるはずと思っていたので、仮説が崩れた当初は、正直焦りましたね。

けれど徐々に「予測不可能なことが起こるからこそ、現地にいる意味がある!」と思えるようになってきました。もし想像していたポートランドらしい人ばかりに出会っていたら、良い面だけに目を向けて日本に帰国することになっていたと思います。今は「いろんな角度からポートランドを見て、できることは全部やるぞ!」と前向きな気持ちでいます。

ーーコミュニティカレッジ以外に、現地でやっていることはありますか?

現地の公立高校でのボランティアやキャリアカウンセラーへのインタビュー、街のNPO視察をしています。他にもより広く物事を捉えるため、宗教・文化コミュニティへの訪問や街歩きなど「キャリア教育」という言葉に囚われず、何事もやってみるようにしています。

街歩きの中で見つけた、お気に入りのマーケット。ローカルな人たちや食べ物などに出会えるのだそう。

ーー充実した留学生活ですね! 留学は残りわずかということですが、さらなるアップデートが楽しみです!

ありがとうございます!留学テーマに関する活動や学びも大切にしつつ、自分の感覚に従って、残りの期間も過ごしていきたいです。

点と点がつながり、キャリア教育に出会う

ーー「キャリア教育」への関心が強いきむりささん。そもそもなぜ教育に興味を持ったのですか?

高校2年生の時に、福岡県主催の英語キャンプに参加したことがきっかけです。高校生活は部活と勉強漬けの日々だったので、ここでの経験が衝撃で。初めて自分の価値観を考えたり、ストレス社会との向き合い方を考えたりと、“新しい学びの形”を体験しました。

ーー“新しい学び”というのは、どういうことですか?

高校生の私にとって、勉強は目的のために頑張るものでした。けれどこの時に、「学ぶことって多様な形があるし、本当はもっと面白いのでは?」と思ったんです。

今振り返ると、この時間が教育に興味を持つきっかけになりましたね。

ーー教育への興味から、どのようにキャリア教育に繋がったのですか?

実は、高校時代のキャンプからすぐにキャリア教育に繋がったわけではないんです。大学に入学して覚えた違和感と大学での活動を通して、キャリア教育を知りました。

その違和感には、大学入学を機に上京し、様々なバックグラウンドの人との出会いが広がる中で気づきました。好きを貫いている人と出会うたびに、まだ何がやりたいか分からない自分と比較して、苦しく感じていました。この時、学歴や偏差値以外で、自分を表す方法がわからなかったんだと思います。

ーーそんな苦しみと葛藤する中で、大学時代はどんな活動をしていたんですか?

大学1年生の時は、高校時代の憧れの先輩が所属していた旅を広める学生団体TABIPPOでの活動や旅のプログラムの参加など、旅に関する活動メインでした。その中で、世界一周や休学など今まで聞いたこともなかった選択をして人生を楽しむ仲間に出会って。一本に見えていたキャリアの道が、少しずつ増えてきたんです。

ーー旅に関する経験を通して、きむりささん自身がキャリアを考え直すきっかけになったんですね。

そうですね。また旅を通して出会った人たちと話す時は、不思議と年齢やバックグラウンドなどで測られている感じがせず、心地よい自分でいることができたんです。

これを「自分の教育への興味と繋げられないかな」と思いながら活動を続けていたら、株式会社ハッシャダイに出会い、キャリア教育という概念を知りました。

ーーなるほど。ひょんなところから、キャリア教育に。

「選択の格差を是正して、誰もが自分の人生を自分で選択できるようにしたい」という彼らのビジョンを知った時、雷に打たれたような感覚がありました。その衝動のまま、メンバーの1人に「何か手伝わせてください!」とTwitterで長文のメッセージを送ったんです。

すると、タイミングがよかったことに、高校生のキャリア教育に取り組む一般社団法人HASSYADAI socialがもうすぐ立ち上がることを教えてくれて。そこからの大学2-3年生の期間は、立ち上げ期のメンバーとしての活動がメインでした。

ーー今はキャリア教育のイメージがあるきむりささんも、そこに至るまで紆余曲折があったんですね。

はい。心が動いたものを続けていたら、その点と点がつながってキャリア教育に行き着いた、という感じですね。これからも、どんなことが繋がっていくのか楽しみです。

大学4年で違和感に立ち止まれた理由

ーー今までの点と点がつながってキャリア教育を知り、それを「形にする」活動をされていた一方で、現在の留学ではキャリア教育について「学ぶ・深掘る」ことを重視されている印象があります。どのような変化があったのですか?

大学入学当時は知らないことばかりだったので、「今の自分にできるのは、とにかく手を動かすことだけだ!」と思い、活動していました。

そこから「深掘る」方向へと変化したのは、トヨタ自動車とHASSYADAI socialが共同主催の『project:ZENKAI』に関わった時です。このプログラムがまた本当に面白くて!参加資格に、学歴・経歴は不問。必要なのは、「15~18歳である」ということだけなんです。プログラムは、1on1などの小さな対話が軸になっています。

私はプログラムをつくる側だったのですが、参加者の高校生1人ひとりと対話を重ねたり、社会人メンターと出会ったりする中で、私自身も、やりたいことに気づけたんですよね。

画像は公式サイトより引用:  https://project-zenkai.jp/

私にとってのやりたいことは、「人生を賭けても成し遂げたい」というような大きなものではありませんでした。ずっと私の近くにあった、シンプルなものだったんです。それが、国際社会への憧れでした。project:ZENKAIを通して「今の私は、これでいいんだ」と自信を持って、留学を決断できたと思います。

ーーproject:ZENKAIをきっかけに、自分自身により素直になれたんですね。

そうなんです。海外への想いと同時に、高校受験→大学受験→就活…と「進路を決めなければいけない」というプレッシャーがいつまでも続くことへの違和感にも気づきました。将来やりたいことを考えるのは楽しいはずなのに、「やらなければいけない」という考えが強くなりすぎて、苦しく感じた時期がありました。

ーーそれで、休学へ…?

はい。今までの全ての経験があった上で、project:ZENKAIで自分自身と向き合ったこと・その背中を応援してくれる仲間がいたこと。これらが引き金となり、立ち止まる選択ができたと思います。

まずは自分が素直でありたい

ーーきむりささん自身は、今どんなキャリアを考えていますか?

学歴や経歴、国籍、性別などの指標や言葉など人をわかりやすく測るものだけでなく、人の内側にある、好奇心や気持ちなど目に見えにくいものも、より多くの人が信じられる社会になったらいいなと思います。そのためにまずは、自分の性質を活かしたり、得意なことをより伸ばしていけたりする仕事や環境を探したいです。

ーーそんなキャリアを築く上で、大切にしたいことはありますか?

違和感を覚えたら立ち止まるなど、日々の気持ちに素直でいることです。より多くの人が自身の可能性を信じられるようになるためにも、まずは私自身が社会にある”わかりやすさ”を越えて本音に向き合うことで、自分の可能性を広げ続けたいと思います。

編集後記

インタビューを通じて、ありのままの気持ち・状況を話してくださり、伺った話はどれも“木村りささんの話”だと確信できる感覚が心地よかったです。そして、私自身も”わかりやすい”生き方と”わかりにくい”自分の内の間で揺れ動き、自分を見失う苦しさを感じた経験があり、ついつい聞き入ってしまう瞬間もありました。

学生インタビューでは恒例としている読者へのメッセージですが、あえて記さず、読者の皆さんそれぞれの捉え方に委ねることにしました。一人ひとり異なる生き方をしているだから、感じ方も人それぞれで、それを大切にしたいという背景です。

その中であえて私の願いをお伝えするならば、この記事を読んで心が動いたポイントをぜひ大事に記憶していただけると嬉しいです。その気持ちそのものが、きっと未来の選択(就活でも、課外活動でも)のきっかけになるのではないかなと思います。


「社会課題解決」という言葉では表現しきれない学生の経験・感情を文章にしたい!
そのような想いで、社会課題解決に取り組む学生へのインタビューを始めました。

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