第4回:笹田まどかさん「交流・対話を通じて、人々の人生を豊かにしたい」

社会課題解決に取り組む学生のストーリー

allesgoodのインターン生の由衣です。

現在バングラディシュの現地NGOでインターン中の笹田まどかさんにインタビューしてきました!

現地駐在インターンだからこそ感じられる、社会の不条理さや、ストリートチルドレンの子ども達の可能性を、真っ直ぐな言葉で話していただきました。

自己紹介

名前:笹田まどか(ささだ まどか)
経歴:青山学院大学 国際政治経済学部に在籍。
大学では、Green Innovation Academyや、教育系のNPOでの長期インターンなど、社会課題に関する様々な活動に参加。現在は大学を休学し、2022年3月からの1年間、バングラディシュの現地NGO エクマットラでインターン生として活動する。

バングラデシュ現地NGOのリアルを体感するインターンシップ

ーー現在のバングラデシュでのインターンはどんな活動をされているのですか?

インターン先はエクマットラという、バングラデシュの首都ダッカの路上に暮らすストリートチルドレンの自立支援を行う現地NGOです。エクマットラでは、「生まれた環境に関わらず、子ども達の成長と安全を守る環境があれば、子ども達は何にでもなれる」という信念のもと、路上で生活する子どもの状況を調査したり、過酷な状況で暮らす子どもや、学ぶ意欲の高い子どもを保護し、教育や住まいを届けたりしています。

私自身は、ストリートチルドレンの自立支援に幅広く関わらせてもらっていて、ストリートチルドレンの多いエリアに訪れて調査や子どもの保護をしたり、「エクマットラアカデミー」という元ストリートチルドレンが暮らす施設で子どもと接したりしています。

ーーエクマットラアカデミー。どんな場所なのでしょうか?

エクマットラアカデミーは、ストリートチルドレンのロールモデルとなるような、次世代リーダーを輩出することを目指して設立されました。なので、アカデミーで暮らす子ども達は地域の学校に通いながら、アカデミーにて実施される文化教育やスポーツ大会など、人間力を育むためのさまざまな教育やイベントに参加しています。現在は、60名弱の元ストリートチルドレンの子ども達が暮らしているのですが、彼らにとって家でもあり学校でもある場所ですね。

私は、そんなアカデミーに定期的に訪れて、子ども達一人ひとりの成長を見守っています。

ーー他には、どんなお仕事を担当されているのですか?

エクマットラでは、ストリートチルドレンの自立支援だけではなく、その活動を継続させていくための、エクマットラアントレプレナーズという収益事業も運営しています。その収益事業の方にも携わっています。

ーー収益事業では、具体的にどのような活動をしているのですか?

エクマットラアントレプレナーズのハンディクラフト部門で、日本での販売に向けたマーケティングやデザインのアイディア出しを行っています!以前、日本でフェアトレード商品のマーケティングや販売に関わった経験があって、その経験を活かしてお手伝いしています。

他にもバングラデシュへの進出を検討する日本企業のコンサルティングや、日本とバングラデシュの友好50周年を記念したイベントの冊子作成のサポートなどにも関わりました。

作り手の目線を知るために、作り手の女性達と一緒にコースター作りにも挑戦

ーー幅広いお仕事内容ですね。実際にエクマットラの一員として活動する日々はどうですか?

社会課題解決に取り組む上で疎かにできない資金確保にも関わることができて、貴重な経験ができています。

簡単ではないなと考えさせられる日々で、「質の良い教育の提供」と「資金確保」を適切に両立しようと心がけています。活動のために資金確保は欠かせないし、収益事業のお仕事もたくさんあって、ついつい資金面ばかりを考えてしまいそうになります。けれど、資金面ばかりに目を向けて子ども達への教育が蔑ろになっては本末転倒になってしまうので…。

ーー教育と資金確保をバランスするために、心掛けていることはありますか?

収益事業に関わる中でも、子ども達のことを考える時間を作るようにしていますね。アカデミーはダッカから170km離れた場所にあって訪問できる機会は限られているので、「前回はこの子とこんな会話をしたから次はこれを聞こう、この言葉をかけてみよう」と日々想いを馳せて、アカデミーでの時間を少しでも良いものにしようとしています

バングラデシュ・ストリートチルドレンに辿り着いた背景

ーー組織の一員として奮闘するインターンシップ。なぜエクマットラでのインターンシップの参加を決めたのですか?

大学3年生の夏くらいから、海外インターンシップに参加したいと考えるようになりました。

もともと、大学入学前から海外に渡航して視野を広げたいと思っていたんです。けれど、コロナの影響で長期での海外渡航を実現できないまま、大学3年の秋になってしまって。大学生活が残り1年しかないと考えた時に、入学前から挑戦したいと考えていた海外渡航への想いが強くなりました。

その中で、当時インターンをしていたNPOの代表にその想いを相談したところ、エクマットラを紹介してもらったんです。

ーーエクマットラを紹介してもらって、何かビビットくるポイントがあったのですか?

実は海外の中でも、バングラデシュで活動できたらいいなという想いがありました。エクマットラはバングラデシュの現地NGOなので、興味を惹かれましたね。

ーーなぜバングラデシュに興味があったのですか?

大学3年生の前期に履修をした授業の中で、日本の小学校低学年の子ども達向けにバングラデシュについて授業をしたんです。

当時はバングラデシュの位置さえもわからなくて(汗)。本やネットで情報を集めたり、バングラデシュの人々にオンラインでヒアリングをしたり、あらゆる方法で情報を集めて授業を行いました。結果、子ども達は授業を楽しんでくれて、大成功でした。

けれど、その時の出来事が心残りになっていて…。授業後にバングラデシュについて質問してくれる子どももいたのですが、私が伝えられるのはネットや本で調べた情報だけだったんです。私自身の目で見たリアルなバングラデシュではなく、彼らが大きくなれば自分で調べられるような情報を伝えることに、心苦しく感じていました。

それがきっかけで、バングラデシュのリアルを自分の目で見たいと思うようになりましたね。

ーーストリートチルドレンや教育にも、もともと興味はあったのですか?

そうですね。エクマットラの代表が語る「子ども達には皆可能性があって、その可能性を最大限に信じ、社会を驚かせるような人間を一人でも多く輩出するんだ」という想いに共感していました。

ーー代表の想いの、どのような部分に共感したのですか?

私自身、両親のサポートのおかげで、幼い頃から不自由なくやりたいことに挑戦できました。一方で、ストリートチルドレンの子ども達のように、そういった場所に生まれなかったことで、私とは全く異なる人生を歩む子ども達もいます。これまでやりたいことに挑戦できる人生を歩んできたからこそ、そんな社会の不条理さと向き合い、社会に抑圧される人々と共に生きようと使命感のようなものを抱いていました。

その想いは渡航後も強くなっていて。路上に暮らす子ども達は、純粋無垢で、日本で暮らす子ども達と大きく変わらないんです。無邪気に笑うし、目をきらきらと輝かせています。

けれど、路上で生活するが故に、人生の選択肢がものすごく少ないし、今日を生きるために精一杯です。家族を守るために罪を犯す子どももいます。そんな現実と対峙すると、強い憤りを感じて、ただの大学生だけれど何かしたいと奮い立たされます。

実際に子ども達と触れ合いながら、フィールド調査を実施

子ども達一人ひとりの人生に向き合う現在

ーー現地で“共に生きる”からこそ湧き上がる感情ですね。印象に残る、子ども達との出来事はありますか?

アカデミーで暮らす子ども達は、元ストリートチルドレンだとわからないほど、好きなことに熱中しています。少し前までは路上で生き延びていたのだとふと思い出すと、アカデミーという環境があることで、人がこれほど変われるのかと心が動かされます。

子ども達の中には、バングラデシュ国内のスポーツ選手養成学校の入学試験に挑戦したり、地域の歌や絵のコンテストで入賞したりする子がいて、子ども達には機会さえあれば輝ける可能性があるのだと実感しますね。

ーー子ども達の可能性を応援するアカデミー。どのような特徴があるのですか?

アカデミーの自然豊かな環境ですね。池の中には魚がいて、芝生があって、農場があって。敷地内にはアヒルの家族が動き回っていて、犬や牛など色々な動物がいて!

アカデミーの子ども達が暮らしていたダッカは、人口密度がものすごく高く、大気汚染も深刻で、車のクラクションが鳴り響くような場所です。ストリートチルドレンであるかどうかに関わらず、自分自身と対峙するゆとりがないんじゃないかなと思うんです。

一方でアカデミーは、自然や動物に囲まれ、自分自身の感情に耳を傾けたり、生きるとは何か考えさせられたりするような場所なのだと感じます。

ーー子ども達が自身の気持ちに耳を傾けられる環境があるのですね。

そうだと思います。アカデミーに暮らす子ども達は元ストリートチルドレンではあるけれど、アカデミーで暮らし学ぶことは、エクマットラのスタッフが救った結果ではなく、子ども達が“チャンスを掴んだ”結果です。そんな意思のある子ども達だからこそ、自分自身や生きることについて深く考えることができる環境のあるアカデミーで、自分の可能性に気づくことができるのだと思います。

ーーインタビューを通じて、子ども達一人ひとりと誠実に向き合おうとする強さが印象的です。日々、意識しているのですか?

教育系のNPOでインターンした際に関わっていた、高校生向けのプログラムでの学びが染み付いているのかも…!

そのプログラムでは、大学生メンターとして高校生に伴走していました。高校生一人ひとりに合った言葉をかけることを心がける中で、“子ども達”というグループではなくて、一人ひとりの集まりがチーム・グループであるという考え方が育まれましたね。

その経験が、「アカデミーに在籍する60名の子ども達」ではなくて、「年代も違えば、興味も違う、一人ひとり個性を持った子ども」という視点を持って活動することに繋がっているのかもしれないです。

人との関わりを通じて、人生・社会を豊かにしたい

ーーエクマットラでのインターンも残り3ヶ月ほど。残りの期間でやりたいことはありますか?

アカデミーの子ども達に私の人生について話したいですね。私がこれまでどんな人生を歩んで、どんな悩みを抱えて、どんな選択をして、バングラデシュの今に辿り着いたのか、詳しく伝えたいなと思っています。

ーーなぜまどかさんのこれまでの道のりを伝えたいのですか?

エクマットラには、アカデミーのスタッフや、日本・バングラデシュのサポーターなど、たくさんの大人の方々が関わっています。その中でインターン生って、子ども達にとって最も年齢の近いスタッフなんです。彼らより数年だけ長く生きている先輩として、生き方について見せられるものがあるんじゃないかなと思っています。

特にアカデミーの卒業を控える中高生の子達は、卒業後の進路を考えなければいけない時期が近づいています。安心して生活し成長できる、アカデミーを出ることはきっと怖いはずです。私自身のこれまでの人生の歩みが、子ども達がこれからの人生で自らの意思で選択していくためのヒントになったらいいなと考えています。

ーー「自分の意思で選択する」ことは、まどかさん自身も大切にされているんですか?

そうですね。よく覚えているのが、幼少期の習い事です。両親は自分の意思で習い事を始めて、自分の意思で辞めることを大切にしてくれていました。

様々な習い事に挑戦させてもらえたのですが、小学5年生の時に、両親から「自分の将来とも少しずつ向き合い始める時期なんじゃないか」というアドバイスをもらったんです。私にあった選択肢は、小さい頃から習っていた水泳かラグビーのどちらかを辞めるか、どちらも辞めて勉強に専念するか、でした。どれも好きで続けていたスポーツなので、どちらかを諦めることはすごく辛くて、たくさん悩みましたね。

たくさん悩んだ結果、ラグビーを続けると選択しました。振り返るとラグビーを選んだからこそ出られた試合や勝てた試合があって、自分の意思で選択してよかったと思えたんです。

ーーまどかさんの意思を尊重してくれるご両親がいたんですね。

両親のおかげで様々な機会を選択できて、さらに「自分の意思で選択してよかった」と思うからこそ、子ども達にも自分の意思で選択をしていくサポートをしたいですね。

ーーその中で、将来、大切にしたいビジョンや考えはありますか?

「人との関わりを通じて、人生を豊かにすること」を大切にしたいです。

対話や交流を通じて、人々に新たな気づきを届けられるような機会を作る仕事に関われたら嬉しいなと考えています。私自身も、人との対話や出会いを通じて、自分自身の可能性に気づける人でありたいです。

ーー実際にまどかさんの心が動いたような、人の出会いがあったのですか?

アカデミーにある日本人の方がゲストで来てくださって、その方の子ども達へのスピーチが印象に残っていますね。

その方は「17年間取り組んだサッカーを辞めた話」をしてくれました。17年間、夢中になってサッカーに取り組んでいたけれど、その裏で勉強にも励んでいたみたいなんです。だからこそ、サッカー辞める覚悟を持つことが出来て、サッカーではない好き・得意を仕事に繋げられたと語っていました。

アカデミーの中高生くらいの子ども達は、サッカー選手やクリケット選手を夢見ながらも、それを叶えることが難しい現実にも気づき始める年齢です。そんな中、スピーチをきっかけに勉強を頑張る理由や、他の夢を持つ重要性を感じ取っていたみたいで。

スピーチの1ヶ月後に将来の夢を聞いてみると、「サッカー選手になりたい。けれど、会計士にも興味があるから勉強も頑張る。」と子ども達が自分の人生と誠実に向き合い始めていたんです。

ーー人生の先輩の体験談から、子ども達は気づきを得たんですね。

子ども達への変化を目の当たりにして、彼らにとってターニングポイントとなる出会いになったんじゃないかなと感じましたね。

そんな気づきを生み出す瞬間を繰り返すことで、人々の人生は豊かになっていくと思うし、豊かになった人生が集まれば社会も豊かになっていくのではないかなって思っています!

自身の想いを、行動で形に

ーー最後に読者の皆さんにメッセージをいただけますか?

「行動」をぜひ大切にしてほしいです。みんな素敵なアイディアや夢、想いを持っていると思うけれど、行動に移せる人は限られているのかなと思います。

夢に向かって行動を起こすために、「小さな成功体験を積み重ねること」を意識してみると良いと思います。

自分の意思で行動することを繰り返すと、それが習慣になるし、いつの間にかその行動を通じて得られた出会いや経験が自分のターニングポイントとなり、次の行動に繋がっていくはずです。

私自身、行動しなかったら得られなかった機会や景色があって、バングラデシュでの今も、これまでの行動が導いてくれました。行動を起こしてみると、素敵な景色が広がっています!

編集後記

子ども達一人ひとりに向き合うことを大切にしながら活動するまどかさん。一人ひとりと向き合うって言葉にすると簡単ですが、言葉も育った環境も異なる人々と向き合うことは本当にすごいことだと思います。

その秘訣は、まどかさんも話していた「自分の意思で選択すること」なのでしょうか。

簡単ではないこともあるかもしれないので、時には信頼する人に頼りつつ、自分の意思に対して真っ直ぐに行動を続けること。

それもまた簡単ではないと思うけれど、まどかさんの真っ直ぐな言葉と写真に写る子ども達との様子から、自分の意思に真っ直ぐに行動することを諦めたくないと、自分を信じる勇気をもらえたインタビューでした!


「社会課題解決」という言葉では表現しきれない学生の経験・感情を文章にしたい!

そのような想いで、社会課題解決に取り組む学生へのインタビューを始めました。

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