迫り来る2025年問題、社会福祉の抱える課題とその解決策は?

社会福祉

「社会福祉」と聞いてどのようなイメージが湧きますか?

「幸せ」に生きる、あるいは「より良く」生きるためのサービスといったイメージを持っている方は多いと思います。でもなんだか曖昧で、よく分からないという方も多いのではないでしょうか?

この記事ではそんな社会福祉に焦点を当て、具体的な内容や問題、その解決策についてご紹介します。

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1.社会福祉とは?

社会福祉とは、

「障害者、母子家庭など社会生活を送る上で様々なハンディキャップを負っている人々が、そのハンディキャップを克服して安心して社会生活を営めるよう、公的な支援を行う制度」

のこと。(引用:金融広報中央委員会「社会保障制度」)

健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」って習ったことありますよね。いわゆる生存権です。社会科等のテストで問われたことがあるという人もいるのではないでしょうか?
この権利は日本国憲法第25条によって全ての国民に保障されていると同時に、これを保障するのは国の責務だと明記されています。

このように全ての国民は生存権を有しており、ハンディキャップを抱えた人の自立した日常生活をサポートするために社会福祉が必要となっています。

似たような言葉である「社会保障」とは何が違うのでしょうか?

社会保障とは、生涯の様々なリスクに対して社会全体で備えるための仕組み
社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生から成り立っています。
実は社会福祉は社会保障の4つの柱のうちの一つなのです。

更に、対象者に応じて
・高齢者福祉
・障がい者福祉
・児童福祉
・母子・寡婦福祉

の4領域があります。

今回は高齢者福祉に焦点を当て、抱えている課題や解決策について見ていきましょう。

(出典:国際協力機構(JICA)「生涯を支える 社会保障」)

2.高齢者福祉が抱える問題とは?

高齢者福祉は1963年に制定された老人福祉法と2000年に導入された介護保険制度を中心とした法律や制度に基づいて、高齢者の心身の健康の保持や生活の安定をサポートするために発展してきました。

サポートの手段としては、高齢者を対象としたホームヘルプサービスや福祉施設、地域包括ケアシステムが該当します。
(地域包括ケアシステム:「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」システムのこと。厚生労働省「地域包括ケアシステム」より引用)

皆さんご存知の通り日本では少子高齢化が進んでおり、以前の記事でも触れた「2025年問題」があと数年後にまで迫ってきています。

若い世代の人口や出生率は減少傾向にある一方、75歳以上の後期高齢者が国民の4人に1人という超高齢化社会を迎える2025年。
社会保障の担い手である労働人口が減っていくことによって危惧されているのは
・社会保障費のバランス崩壊
・労働人口への負荷増加
・医療・介護業界の需要と供給のバランス崩壊
といったリスクです。

社会福祉の観点から更に、介護における問題に着目してみましょう。
具体的にどのような問題が起こっているのでしょうか?

(出典:三菱電機ITソリューションズ株式会社「医療・介護業界に迫る「2025年問題」が及ぼす影響と、今考えておくべきこととは」)

3.介護問題とその原因

具体的には、
介護難民(介護が必要なのに適切な介護サービスが受けられない高齢者のこと)
老老介護(介護を行う側、受ける側双方の年齢が65歳以上であること)
認認介護(老老介護の中でも双方が認知症であるという危険な介護状況)
等の問題が顕在化しています。

こういった問題の発生には共通する要因が主に3つあります。

まず、高齢者数の急増に伴う要介護(要支援)認定者数の増加
介護保険制度が始まった2000年は218万人であった要介護(要支援)認定者数は年々増加し、2021年7月末にはその3倍以上の687.1万人にまで増えました。今後も更に増えていくことが見込まれています。

次に、施設や事業数の不足。急増する要介護認定者数に介護施設数が追いついていないというのが現状です。
また、介護施設数だけでなく、老人福祉・介護事業の倒産も見られます。新型コロナ感染拡大も影響し、2020年の老人福祉・介護事業倒産は2000年以降最多の118件。倒産までは行かずとも、事業活動を停止した休廃業・解散も2010年からの調査開始以来過去最多となる455件を更新しました。
つまり、2020年だけで合計573もの事業者が市場から退出したことになります。

画像1

(引用:東京商工リサーチ「2020年「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散調査」)

そして、介護業界における人材不足
これに関してはよく耳にする人も多いのではないでしょうか?
実は、介護職員数自体は介護保険制度の施行後増加しています。
2000年に54.9万人だった職員数は2012年にはおよそ3倍の163万人にまで増加しました。ですが急増する要介護者数に追いつかず、慢性的な人材不足が起こっているのです。2025年には32万人、2040年にはその倍以上の69万人もの人材が不足するとのことです。

このように、年々増えゆく高齢者に十分な介護サービスを提供するための設備や事業、人材も足りていないという現状から、前述したような諸問題が起こっています。
これらは今後高齢者人口が膨らんでいく都市部の方が地方より深刻化しやすいとも言われています。

(出典:東京商工リサーチ「2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況」、厚生労働省「介護分野の現状等について」、厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要(令和3年7月暫定版)」、厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)

4.どうやって解決できる?

様々な問題を抱えている日本の高齢者福祉ですが、どのように解決していけば良いのでしょうか?

エシカル就活では、社会福祉の課題に対して様々な角度から取り組む企業と出会うことができます。
この記事では、他国の高齢者福祉の事例や具体的な解決策を紹介します。

高福祉国家デンマークの例

まずは高福祉国家として有名なデンマークの高齢者福祉の例を見てみましょう。

実はデンマークも高齢化に伴う介護費増加の問題を抱えていました。
「プライエム」という介護施設(日本でいう特別擁護老人ホーム)を多数建設する計画を政府が推進したのですが、結果的に施設の建設費を含め介護費の大幅な増加を招いてしまったのです。

そこで問題解決の鍵となったのが、施設から在宅介護への転換政策
この政策の根幹にあるのが「高齢者福祉の3原則」
・生活の継続性
・自己決定の原則
・残存能力の活用

です。

これに基づき、介護が必要になってもそれまでの生活に継続性を持たせるために、過度にケアを行うのではなく在宅で暮らす人それぞれのニーズに応じてケアが提供できる体制を整えていきました。
プライエムの新規建設は1988年以降禁止され、代わりに高齢者住宅の建設が推し進められるようになっています。

このように、デンマークの高齢者福祉は自助努力を基盤とした在宅介護の方向性に切り替わっています。更にIoTを活用することにより、個人のバイタル・データ(生体情報)を医療関係者が必要に応じて確認できるシステムを構築する試みも始まっており、よりパーソナライズされた福祉のあり方が期待されています。

(出典:日経BP総合研究所「『介護先進国』デンマークから日本が学べること Vol.70」、HUAWEI「より健康に、より幸せに IoTがもたらすデンマーク医療・福祉の未来」)

介護ロボット

続いて紹介するのは介護ロボット
厚生労働省によると、
①情報の感知(センサー系)
②判断(知能・制御系)
③動作(駆動系)
の要素技術を持ったロボットのうち、利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器を指します。

移動や排泄、入浴をサポートするものをはじめ、近年はコミュニケーションロボットの注目度も上がってきています。
癒しをもたらすぬいぐるみタイプのロボットもあれば、会話やゲーム、ダンスまでこなす人型のロボットもあり、種類によってもたらされる効果は様々。利用者の心身の健康の維持や脳の活性化にも繋がります。

厚生労働省では、介護現場のニーズと開発企業の技術情報等(シーズ)のマッチング支援を行う「介護ロボットのニーズ・シーズ マッチング支援事業」を2021年6月14日から開始しました。
介護現場の問題改善につながる介護ロボットの今後の進化・活躍にこれからも期待したいですね。

(出典:厚生労働省「介護ロボットとは」、厚生労働省「介護ロボットのニーズ・シーズ マッチング支援事業」を6月14日(月)から開始します。」、モノレコ by Ameba「コミュニケーションロボットおすすめ14選|最新!介護・高齢者向けなど用途別に紹介」)

5.まとめ

少子高齢化に伴い、今後更に深刻化していくとされる高齢者福祉の問題。

急増する高齢者に十分な福祉を提供するための人材や施設・事業をすぐに増やすことは難しいかもしれません。ですが、他国の成功例を参考にしてみたり、テクノロジーを活用することで問題改善につながりうるということもお分かりいただけたかと思います。

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