テレビやCMで時折取り上げられる「貧困問題」。
街中でも募金活動に取り組む人の姿を見かけますよね。
貧困問題の解決というと、国や政府、国際機関、組織としての援助、寄付、ボランティアといった活動が真っ先に思い浮かぶかもしれません。
しかしながら、近年ではそれ以外にも多岐にわたった解決策が実施されています。
今回は貧困問題についての理解を深めた上で、解決につながるビジネスアイデアを紹介します。
1.貧困とは?
UNDP(国連開発計画)では、
教育、仕事、食料、保健医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態
にあることを指しています。
(引用元:国連開発計画「UNDP-貧困とは」)
貧困の明確なラインはあるのでしょうか?
実は国や組織によって指標がそれぞれ異なるのです。
2.貧困の主な指標と定義
様々な指標がありますが、貧困は大きく「絶対的貧困」と「相対的貧困」に分けられます。
「絶対的貧困」とは
「絶対的貧困」は生きていく上で必要な最低限の生活水準が満たされていない状態のことを指し、主に開発途上国での貧困を把握する際に用いられます。
世界銀行では2011年の購買力平価に基づき1人あたり1日1.90ドルを国際貧困ラインとし、これに満たない層を絶対的貧困としています。
1.90ドルは日本円に換算すると約200円ほど。
これでは十分な食料や住む場所を確保したり、教育や医療を受けるのは難しいですよね。お金を稼ぐための仕事に行く際にかかるお金も200円の中で賄わなければなりません。
ここ20年、絶対的貧困率は縮小傾向にありました。
しかしながら、新型コロナウイルスの拡大や紛争、気候変動等の影響による景気後退の深刻度によっては、2021年には絶対的貧困者が1.5億人にまで増加する恐れがあると世界銀行は発表しています。
(参考:世界銀行「国際貧困ライン、1日1.25ドルから1日1.90ドルに改定」
世界銀行「新型コロナウイルス感染症により2021年までに極度の貧困層が最大1億5,000万人増加」)
「相対的貧困」とは
一方、ある国や地域内で見た時に大多数よりも貧しい状態にあることを指し、主に先進国での貧困を把握する際に用いられるのが「相対的貧困」です。
OECD(経済協力開発機構)は全人口の家計所得中央値の半分を相対的貧困の貧困ラインとし、世帯の所得がこれに満たない状態を相対的貧困としています。
この基準を基に算出された2018年の日本の相対的貧困率は15.7%でした。これは相対的貧困にあたる人が約6人に1人の割合で存在しているということを示しています。
(出典:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」)
これらの「絶対的貧困」と「相対的貧困」で貧困の基準となっているのは主に所得です。
しかし実際のところ、所得だけでは把握できない貧困もありますよね。
そのため、教育や健康、生活水準の側面を考慮した指数として用いられる多次元貧困指数(Multidimensional Poverty Index: MPI)という指標もあります。
ここまでで紹介した3つ以外にも、貧困を測る指標や概念はいくつかあります。
貧困は多面的な要素が絡み合っており、それだけ複雑な問題なのです。
この記事では途上国における貧困に焦点を当て、更に背景や解決策について探っていきたいと思います。
3.貧困が起こってしまう背景
そもそもなぜ貧困に陥ってしまうのでしょうか?
国や地域により原因は様々ですが、
・紛争
・病気
・気候変動、自然災害
・政治的要因
・身分制度
・人種や性別の差別といった社会的不公正
等が関係しています。
こういった要因により貧困状態になってしまった結果、
・十分な食料や飲料水の確保ができない
・子どもでも労働しなければならない(児童労働)
・栄養失調等、健康を害する
・医療が受けられない
・住む場所がない
・教育が受けられない
といった負の影響が生まれてしまうのです。
また、貧困が世代を超えて引き継がれてしまう「貧困の連鎖」という現象も少なくありません。
例えば、貧困家庭に生まれて十分に教育を受けられないまま育つと技術や知識に乏しくなり、選択できる職業の幅が狭まってしまいます。不安定な低賃金の仕事では安定した収入が得られず、食料や住む場所、医療を受けることもままなりません。そのような家庭に生まれた子どももまた貧困の波に呑まれてしまい、抜け出せないケースが多くなっているのです。
この悪循環を個人の力で断ち切ることは、事実上不可能と言えます。
4.貧困問題を解決するために
ではどうすれば貧困問題を解決できるのでしょうか?
貧困問題を解決するためのビジネスアイデアを2つご紹介します。
①マイクロファイナンス
マイクロファイナンスとは、
貧困層や低所得層を対象に貧困緩和を目的として行われる小規模金融のこと
を指します。(引用:JICA「1. 貧困緩和とマイクロファイナンス」)
その中でも、
・マイクロクレジット(無担保で小額の融資を行う金融サービス)
・マイクロセービング(小口預金)
・マイクロインシュアランス(低価格で提供される保険)
といった様々なサービスがあります。
2006年にノーベル平和賞を受賞した、「グラミン銀行」という機関の名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?これもマイクロファイナンス機関の一つです。
マイクロファイナンスにはまだ課題もあるものの、経済的な自立を支援することで、貧困からの脱出を図るのが目的となっています。
(参考:JETRO「マイクロファイナンス 貧しい人々に、無担保で小額の資金を」
SOMPO未来研究所「マイクロインシュアランスへの期待と展開」)
②BOPビジネス
BOPとはBase Of the Pyramidの頭文字をとったもの。
世界の所得別人口構成ピラミッドで見ると最下位層に位置し、購買力平価ベースで3,000ドル以下の年間所得である低所得貧困層のことを指します。
開発途上国を中心に世界人口の約7割存在すると言われており、将来的に中間所得者となるとして、市場規模としても注目されているのです。
(出典:富士通総研「BOPビジネスの正しい捉え方」)
このBOP層をターゲットに有益な製品やサービスを提供することによって、貧困層の抱える課題を解決し、更には企業の発展にもつながる持続可能なビジネスがBOPビジネスです。
BOP層を消費者としてだけでなく、生産者や流通業者、小売業者として位置付け、事業のバリューチェーンに組み込む「インクルーシブ・ビジネス」というのも存在しますが、BOPビジネスはこの内の一つと言えます。
日本企業の中では味の素やユーグレナ、サラヤといった数々の企業の取り組みにより、乳幼児の栄養改善や所得の向上、衛生状態の改善等の効果が見られています。
(参考:JETRO「BOPビジネスとは」)
5.まとめ
今回の記事では、貧困が起こってしまう背景や貧困がもたらす諸問題を踏まえ、解決のためのビジネスについてご紹介しました。
貧困問題は様々な要因が複雑に絡まっており、個人の力で抜け出すことは困難となっています。そして持続可能な解決策を打ち出すためにも、非政府組織や国際機関による取り組みだけでなく、ビジネスを通じた課題解決の重要性が高まっているのです。
エシカル就活では貧困問題に取り組む企業をいくつか紹介しています。
貧困問題解決に興味を持たれた方は是非活用してみてください!