企業は社会課題の解決にどう取り組んでいるのか?【事例紹介】

気候変動

企業選びを進めていく中で、「社会課題の解決」に取り組みたいと話す就活生は多いです。

しかし、「社会課題の定義はなんですか?」と問われた時に自信を持って回答できる方は、実は多くないのではないでしょうか。

そもそもビジネスは社会に属する誰かの困り事(=課題)を解決することで持続的に成立する営みであり、その前提に立つと、全ての企業が「社会課題」の解決を行っているとも言えます。

このように、「社会課題」の定義は曖昧であり、再定義が必要だとエシカル就活マガジン編集部は考えています。

そこで本記事では、

  • そもそも社会課題とはなにか?
  • ビジネスを通じた社会課題の解決は可能なのか?
  • 社会課題の解決に取り組んでいる事例(大企業・スタートアップ)

といったトピックを設定し「ビジネスを通じた社会課題の解決」を具体的にイメージできるように解説していきます。

また、実際に社会課題の解決に取り組める企業をどのように探すかといったサービスもまとめています。

結論:社会課題の解決とビジネスは両立できる!

本記事では、社会課題を「資本主義の発展に伴って生じた歪み」と定義します。資本主義は、大量生産・大量消費で形容されるように生産性や効率の追求を求める考え方です。

そして、経済活動を通じて生み出された歪みがとうとう無視できないレベルまで来てしまっているのです。この「歪み」を是正することこそが「社会課題の解決」にあたります。

一般的には新規事業を立案する際に、市場のリサーチから始めるのが一般的です。

一方、社会課題の解決においては事業を行う前提となるマーケットがそもそも存在していないのです。

「市場がないから、儲からない」とされているため、参入企業も少なく、競合が存在しないこともあります。

しかし、一定の制約条件を受け入れ、その上で持続的なビジネスモデルを構築することができれば、社会課題をビジネスを通じて解決することができます。

社会起業家のプラットフォーム、ボーダレス・ジャパン代表の田口氏の著書「9割の社会問題はビジネスで解決できる」では、下記のような記載があります。

非効率をも含めて経済が成り立つようにビジネスをリデザインすることです。 たとえば、こういうことです。  

従来のビジネスでは、体の不自由な人や高齢者はなかなか雇いません。また、雇用したとしても、給料は低くなっています。できる作業が限られていたり、作業のスピードが遅いことがあるからです。

そこでソーシャルビジネスが挑戦するのは、そういった方が無理のないスピードで作業しても、十分な給料を払えるようにビジネスをデザインすることです。

そのためには、そのコストをまかなうだけの高い価格でも買ってもらえる付加価値の高い商品を開発する必要があります。

これは簡単なことではありませんが、最初からそれを前提にビジネスを設計しておけば実現可能なのです。 社会的活動を事業として成立させることができれば、公的支援に頼らず、経済的に自走できるようになります。

引用元:「9割の社会問題はビジネスで解決できる」(2021年5月.PHP研究所)

社会課題の解決に取り組むプレイヤー

社会課題は、複雑な要因が絡み合って生まれています。そのため、行政、企業、NPOがそれぞれ個別にアプローチを試みても、解決は難しいでしょう。

行政、スタートアップ、大企業、ソーシャルセクターなどのプレイヤーには、ステークホルダーとの間で生じる利害を調整し、協業していく姿勢が必要不可欠といえます。

大企業・スタートアップそれぞれのアプローチ

中でも、大企業とスタートアップは二項対立で比較されることが多いです。実際に社会課題の解決という観点で、どのような違いがあるのでしょうか。

キーワードは、CSVとCSRであると考えています。

CSRとは企業活動が社会へ与える影響に責任を持ち、あらゆるステークホルダーからの要求に対して適切な意思決定をすることを指します。主に企業活動の範囲外での活動となり、本業には無関係の奉仕活動なども含まれます。

それに対してCSVとは、社会課題を解決する事業で社会に便益をもたらし、そのリターンとして利益を受け取る活動を指します。社会的な課題を自社の強みで解決することで企業の持続的な成長へとつなげていく差別化戦略の1つと言えます。

例えば、ネスレは乳製品加工工場において、牛乳の濃縮工程で回収した水を再利用することによって水の使用量を削減しています。

参考:サステナビリティ(ネスレ日本HP)

大企業は社会的信用を強みとして行政との連携を行ったり、スタートアップ・ベンチャー企業が察知しにくい、または取り組みが難しい、大規模な社会問題に取り組むことが可能です。

潤沢な経営リソースを活用してCSRだけではなくCSVも実行しやすいと言えます。

それに対して、スタートアップ、ベンチャーは大小問わず未解決課題の解決を事業化していくという観点で、必然的にCSVを意識した経営が求められやすいといえます。大企業との違いは、テクノロジーの活用やスピードを強みとしている点で、家庭や企業など身近な課題解決を行うことも多いです。

社会課題の事例

ここからは、社会課題の具体例に触れていきます。

今回は、気候変動、貧困問題、食糧危機の3つをピックアップしていきます。

①気候変動

「気候変動に関する政府間パネル」では今のまま温暖化が進むと20世紀末と比較して2100年には最大で6.4℃気温が上昇すると言われています。

参考:気候変動に関する政府間パネル(気象庁HP)

気温の上昇により作物や生態系に影響を与えるだけでなく、気温の上昇によりマラリアやデング熱などの感染症が拡大する可能性があります。

アメリカのビール会社・New Belgiumは気候変動に対する問題意識から、気候変動の影響を受けた未来でも手に入る素材を使用したまずいビール「Torched Earth Ale」をあえて生産した事例もあります。
参考:アメリカの醸造会社がつくる「気候変動が進んだ世界のビール」 (IDEAS FOR  GOOD)

②貧困問題

国連の「死亡率推計に関する機関間グループ」によると、2017年に死亡した15歳未満の子供は推計630万人で毎日およそ17,000人が亡くなっていることになります。

先進国と言われる日本も貧困の課題を抱えており、厚生労働省が発表した「平成28年度国民生活基礎調査」によると、日本の相対的貧困率は15.6%で、7人に1人が貧困状態にあると言われています。

相対的貧困とは、国民の年間所得の中央値の50%に満たない所得水準の人(年収約137万円以下)を指しています。

また、「子供の貧困の社会的損失推計」の調査によれば、子供の貧困がもたらす社会的損失は42.9兆円に及ぶと試算されています。

貧困の解決へ向けた取り組み事例として、ホームレスの予防事業や生活支援を行う「HomeDoor」という団体の活動があります。

ただ寄付を促すだけでなく、ホームレスの人々が得意とする、「自転車修理」スキルに着目した、シェアサイクル事業を運営しています。

大阪の放置自転車問題と、ホームレス問題を同時に解決することを目指すという、優れたソーシャルコンセプトを持つ事業と言えます。
参考:「ホームレスって他人事じゃない」大阪のホームレス支援団体Homedoorが語る、コロナ禍の支援現場(IDEAS FOR  GOOD)

③食糧危機

世界では9人に1人が飢餓状態にあります。低・中所得国では干ばつ・洪水・暴風雨などの自然災害が毎年平均して213件も発生している状況です。

特に干ばつは農畜産物の被害の8割を占めています。途上国においても、作物の保存設備や市場への輸送手段がないことから食品ロスが発生しています。

  • 「異常気象の頻発」
  • 「砂漠化の進行」
  • 「水資源の制約」

などにより、供給が需要に追いついていないという課題があります。

社会課題に取り組む企業事例

実際に社会課題の解決に取り組む企業の事例も出していきます。大企業やスタートアップに関わらず、社会課題の解決と利益創出による継続性を両立している企業があります。

①丸井グループ

丸井グループは、中期経営企画として「将来世代の未来を共につくる」、「一人一人の幸せを共につくる」、「共創のプラットフォームをつくる」を目標として掲げています。

上記を実現するために、二酸化炭素排出量を100万t以上削減するなど6つの主要KPIを設定しており、ESG経営の事例として注目を集めています。

>>>丸井グループが考えるサステナビリティ

また、「誰も置き去りにしない」というインクルージョンの考え方を体現していることも特徴的です。

例えば、障がい者アーティストの才能を生かすために、「障がい者アートバンク」を1986年に設立しています。障がい者の中でも、アーティストの持つ才能を活用することで所得面を中心に社会参加を支援する活動で、作品はカレンダーや社内報の表紙への活用といった取り組みを実施しています。

②ボーダレス・ジャパン

2007年に設立されたボーダレス・ジャパンは、国内や海外など分野を問わず、30以上のソーシャルビジネスを展開しています。解決したい社会課題のために新規事業を立ち上げることが特徴的です。

CO2ゼロの自然エネルギー100%のみを販売しているハチドリ電力や、母乳育児向けハーブティーのAMOMAなど、秀逸なコンセプトの事業が多数生まれており、注目を集めています。

③マザーハウス

マザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を掲げ、2006年にバングラデシュからスタートした会社です。

特徴は、途上国の素材や伝統・技術を活かして商品化していることで、現地工場で生産しているため、途上国の雇用にも貢献している。現時点では、6つの生産国と4つの販売国へと規模を拡大しています。

④五常・アンド・カンパニー

五常・アンド・カンパニーは全ての人に金融アクセスを届けることを目指すマイクロファイナンスを中心とした金融サービス業を運営しています。

銀行口座が作れなかったり、銀行からの融資が受けられない途上国の人々のための小口融資のサービスで、低価格で良質な金融サービスを2030年までに50ヵ国1億人以上に届ける目標を掲げています。

社会課題の解決に取り組む企業・団体を探す方法

実際に社会課題に取り組みたい!と考えた時に、おすすめするサービスをいくつかご紹介します。

社会課題をコンセプトに据えた求人サービスは多くないため、どのサービスも貴重な情報収集源になるでしょう。

1.エシカル就活

エシカル就活は、学生と、社会課題に取り組む「エシカル企業」をつなぐプラットフォームです。業界、職種、待遇だけでなく「社会課題の解決」を軸とした就職活動が実現できます。

大手企業・スタートアップともに、掲載されている

D&I分析やESGレポートを元に、審査を通過した企業のみが掲載されており、社会課題別に企業を探せるだけでなく、プロフィールを登録しておけば、エシカル企業からスカウトが届くのが特長です。

>>>エシカル企業を探してみる

2.Activo

Activoは、NPO・社会的企業のボランティア・職員・アルバイトの求人サイトです。小学生からシニアまで、様々な世代が参加できる社会貢献活動を紹介しており、単発のボランティアや物品寄付、プロボノなど参加方法は多種多様となっています。

>>>Activo

3.Drive Career

Drive Careerは、「働く人の思い」や「仕事のやりがい」を重視した求人サイトです。

1993年の創業以来、実践型インターンシップや企業支援プログラムを提供しているNPO法人ETIC.が運営しています。「未来を創る」仕事に特化し、共通の思いやビジョンを持った仲間と働くことをコンセプトとしています。

>>>Drive Career

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